ぱーぷるわんこ

好きなものを好きなだけ。

「最後」を迎えて

渋谷すばるという人間を初めて知ったのはいつだっただろうか。

2009年1月のジャニ勉をたまたま見たとき、気になったのは村上さんとマルちゃんだった。
関ジャニ∞面白いな。気になって、調べていけばいくほど、ヨコヒナにハマった。
ヨコヒナの魅力を一番教えてくれたのは、すばるさんだった。
三馬鹿を知れば知るほど。関ジャニ∞を知れば知るほど、その真ん中に渋谷すばるという人間がいた。
人見知りで、ちっちゃいおっさんで、ファッションが好きで、笑いが好きで、下ネタが好きで、全然アイドルらしくなくて、でも誰よりアイドルで。
命を削って歌う、彼はいつもその中心にいた。
渋谷すばるの才能に、心の底から惚れている彼らを見るのがとても好きだった。

すばるさんが、いつかいなくなってしまうんじゃないか。
音楽が、いつかすばるさんを連れ去ってしまうんじゃないか。
思ったことなんて、まったくなかった。想像したことも、一度だってなかった。
全く、これっぽっちも、すばるさんのいない関ジャニ∞を思い描くことなんてできなかった。
なのに、すばるさんの会見を見たとき。「いつか来るような気がしていた」なんて、思ってしまった。
そんな気、してなかったのに。したこともなかったはずなのに。
すばるさんが音楽に命をかけていることを知っていた。
どれほど、音楽に、歌に、渋谷すばるが誠実であったか、知っていた。
知ってしまっていた。

関ジャニ∞にいてはだめなのかと、ジャニーズにいてはだめなのかと。休業ではだめなのか、ほかに方法はないのかと。思うことは全部、メンバーが聞いてくれていた。
どうしてもだめだと、答えたすばるさんは、今まで見てきたすばるさんだった。
テレビで、ライブで、ずっと見てきたすばるさんだった。

わたしがすばるさんにずっと抱いている印象は、とても「柔らかい」人だなあというものだ。
メンバーに対する接し方でも、その相手を傷つけないように。丁寧に、言葉を選ぶ人だ。
仕事に対しても、ひとつひとつ、とても繊細に、けれどとても自然に、ふわりとこなしていく人だ。
痛みや辛さを、なかったことにして押し流すのではなく、敵だと撥ねのけてしまうのではなく、そっと柔らかく、くるんでしまう人。
ただ、その「柔らかさ」は、関ジャニ∞にいてこそのものなのだろうと思う。
十代のころの、人気に翻弄されたすばるさんや、二十代前半の、とてもとがっていたというすばるさんを経て、関ジャニ∞の中でいたからこその柔らかさなのだろうなと。

地元が同じで、幼馴染のような、村上さん。
誰よりも友達で、ずっと傍にいる、横山さん。
心底すばるさんを尊敬し、後輩でいる、亮ちゃん。
二人の世界があって、ハマるときはハマる、マルちゃん。
センスが似ていて、何もかも大きく包み込む、ヤスくん。
すばるさんの背中を見続け、リズムを奏でた、おおくら。

すばるさんの痛みを、きっと最初は村上さんが拾い上げて。
すばるさんの目指すものを、メンバー全員で追いかけてきた。
すばるさんの柔らかさは、そうやって培ってきたのだろう。

すばるさんが行く道は茨の道だ。途方もない、茨の道だ。
きっと茨の先にしか、すばるさんが求めるものはないんだろう。
でも、茨の道って、きっと誰もは進めない。痛くて、傷ついて、心が壊れてしまう。
だからって、誰かとともに行こうとしても、茨は道を閉ざしてしまう。
その痛みも、傷も、全部ひとりで背負わないと、道の向こうには行かせてくれない。
音楽とはそういうものなんだろうなというのは、感じる。
でも、「柔らかさ」を持つすばるさんなら、ひとりでも、きっと進めるのだと思う。
痛みも傷も、ひとりで背負って、でも、痛みも傷もくるんでしまえるすばるさんなら。

すばるさんが、ジャニーズにいた21年全てで決断したと言ったことが、重かった。
ジャニーズにいて、関ジャニ∞にいて、だからこそすばるさんは、茨の道を進むことができてしまうのだろうと思ってしまった。

本音を言うのなら、茨の道なんて進んでほしくない。
大好きな人には、ずっと傷なんてないまま、笑っていてほしい。
7人で、笑っている姿を一生見ていたい。
でも、それはおそらく、渋谷すばるの望むところではない。
アイドルの服を脱ぎ捨てて、夢に向かって進もうとしている。
そんなすばるさんを、6人が応援すると決めている。
なら、応援するよって、言うしかないじゃないか。応援したいって、思ってしまうじゃないか。

すばるさんが、関ジャニ∞から離れると決まってから、今日まで。
7人は、とても丁寧に、ひとつひとつ、一滴の雫もこぼさないように、「最後」を迎えさせてくれたように思う。
関西のローカルも、関東のローカルも、まだ放送されていないので見ていないけれど、そのすべてを丁寧に、終わらせてきたのを知っている。
そして今日、関ジャムで、しっかり、リアルタイムで、「最後」を伝えてくれた。
それがあんまりにも丁寧で。もっと雑に、投げやりだったなら、信じないままでいられたのに、と思う。
たくさんの番組で歌ったひとつひとつの曲が、6人の関ジャニ∞とすばるさんの「これから」を痛いほど伝えてくれた。

「最後」の曲の中で、おそらく唯一、2度歌った曲。
LIFE~目の前の向こうへ~
この曲が発売されたときのことを、よく覚えている。
まだファンになってすぐ。関ジャニ∞がノリノリの曲から抜け出せないでいたころ。タイアップ曲もまだほとんどなくて。メンバーが主演のドラマの主題歌を歌うのが目標だった。
バラエティで、ロケにもたくさん行って。体を張る仕事が多くて。でも、レギュラーが増えて。
いつか、8人に戻れるかもしれない、そんな期待が、消せないでいたころ。
あのとき、この手の中にないあの日描いた夢だと思っていたものは、たくさん叶っている。
かっこいい曲もいっぱい出して、タイアップ曲だってたくさんできて、ドラマの主題歌を歌って、メンバーが月9の主役や映画の主演をやったりして。5大ドームツアーを何回もやって、バラエティで誰かを見ない日はなくなって、音楽フェスに出て、音楽番組でたくさんの人と共演して。
でも、「あの日描いた夢」はまだこの手の中にない。だって、彼らはいつだって、目の前の向こうを目指している。いまだって、ずっと目の前の向こうへ行こうとしている。
この曲が発売されたとき、今の彼らみたいだなって思った曲は、今なお、今の彼らみたいだなと思わせてくれる。
いつだって全力で、目の前の向こうを目指しているんだなあと、改めて感じる。
悲しみも涙も、渇かなくても。痛み堪えて、負けそうでも歩みを止めない。
「いつか笑えるはず」そう言って、終わらない道をずっと進んでる。
誰かの為じゃない、自分の為に生きると決めたすばるさんを、これからきっと見るたびに痛みはあるだろう。でも、その姿に微笑む日が来るだろうとも思う。
関ジャニ∞を失って、かけがえのないものを手に入れるすばるさんは、それでも一人じゃない。
一人なんかじゃない。
「あの日交わした約束をずっと覚えているから」
そう言って、大倉が、すばるさんを示した。
いつかすばるさんが成功して、一流のシンガーになったときに。関ジャニ∞と、共演してくれることを願っている。
まだまだ終わらないから。関ジャニ∞も、渋谷すばるも、ここからだから。